こんなときどうする?

1 突然、警察に逮捕されてしまいました。

2 身に覚えのない請求がきました。

3 年老いた両親が高額なものをセールスマンから 買っているようです。

4 夫が突然家を呼び出して離婚を求め、生活費を渡してくれません。

5 うちの会社はブラックで残業代が付きません。

6 インターネットで個人名や住所などを明らかにされていわれのない攻撃を受けています。

7 近所の騒音に困っています。

8 恋人にカードを貸したら高額な買物をして支払をしてくれません。

9 親が亡くなったのですが、相続人の中に行方不明者と高度の認知症患者がいます。

10 遺言を書きたいのですが。

11 慰謝料ってどれくらいもらえるの?

12 借りている土地や建物の契約期間が満了したら、出ていかなきゃいけないの?

13 敷金って全部返ってくるものじゃないの?

14 貸したお金を返せという裁判で勝ちましたが、相手は無一文です。

15 裁判をしたい相手方が行方不明です。

16 破産されたら婚姻費用も養育費ももらえなくなるの?

 1 突然、警察に逮捕されてしまいました。

 

   逮捕されてしまうと、2日間は弁護士以外とは面会す

  ることはできません。嫌疑が事実であれ無実であれ、ま

  ずは当番弁護士を呼ぶことです。  

   弁護士会に大至急連絡して下さい。家族からでもかま

  いません。初回無料で原則24時間(遅くとも48時間)以

  内に駆けつけます。私も登録していますし、道新に毎週

  リストが掲載されています。早期身柄解放や不起訴の

  ためには素早い対応が必要です。

 

 2 身に覚えのない請求がきました。

 

   それがハガキや手紙であれ、メールであれ自分から

 連絡を取ることは止めた方がいいでしょう。言葉巧みに 

 「負けてもらった」金額を支払うことになりかねません。特

 にインターネットがらみの請求はほぼ100パーセント

 欺と言ってもいいくらいです。

 

   ホントにHなサイトを見てしまった場合でも、ほとんど

 の場合は有料であることが分かりにくい引っかけによるも

 のですから、請求された全額を支払う必要はありません。

 極端な話、裁判で決められた額を払えばいいのです。(実際にそこまでする業者はほぼ皆無です)

   

   ただ、1つだけ注意いただきたいのは、ただの手紙で

 はなく特別送達というハンコを押して受け取る形で裁判

 所からの書類が来た場合です。これを無視していると相

 手方の言い分を認めたということで欠席判決を受け、あり

 もしない債務を負う危険があります。裁判期日が来る前

 に弁護士にご相談下さい。

 

 3 年老いた両親が高額なものをセールスマンから買っているようです。

 

   自分の財産を自由に使うのは当然のことです。でもそ

  れが本人の意思に基づくものではないのであれば、認

  めるわけにはいきません。認知症等で正常な判断がで

  きなくなってきた方に対しては、「補助・保佐・成年後見」

  といった保護制度があり、契約してしまっても後から取

  り消したりすることが可能です。まずは行きつけのお医

  者さんに相談して、認知症の診断テストをしていただい

  たらどうでしょう。

 

   また、とりあえずの対応としてクーリングオフの制度が

     あります。行使期があるものの悪徳業者は法定の書 

  類を交付していないことが多く、期限がきてない場合も

  多く見られます。

 

 

 4 夫が突然家を飛び出して離婚を求め、生活費を渡してくれません。

 

   戸籍上の夫婦である以上、別居していたとしても自分

  と同等の生活をさせる義務が夫婦にはあります。家庭

  裁判所に婚姻費用分担調停を申し立てましょう。実際

  の支払額の計算は申立した時点からになりますから

  刻も早い申立が有利です。

   調停で話し合いができないときは裁判所が審判という

  形で強制的に判断してくれますし、給料等の差し押さえ

  も通常の4分の1ではなく2分の1まで認められていま

  す。

 

 5 うちの会社はブラックで残業代が付きません。

 

   時間外手当の支給は労働基準法上の使用者の義務

  です。労働者としてはまず自分が実際に働いていた時

  間をしっかり記録して証拠化しておくことが重要です。

  手帳や日記に毎日記載し、パソコンや警備データ上

  記録が残るよう工夫して下さい。できれば同僚と一緒

  に交渉することがお互いの残業を裏付けることになり望

  ましいと思います。

 

   交渉でらちがあかないときは、労働審判という手続が

  あり、通常の訴訟よりも早く解決することができます。

 

 6 インターネットで個人名や住所などを明らかにされていわれのない攻撃

  を受けています。

 

   名誉棄損・侮辱あるいは脅迫等に該当する行為であ

 れば刑事告訴も考えられますが、その前提として発信者

 を特定することが必要です。プロバイダーに対してIPアド

 レスその他のデータを明らかにさせるとともに、不当な書

 き込みの削除も請求することができます。特定された書

 き込み者に対しては慰謝料請求が可能です。

 

   但し、まともなプロバイダーやホームページ開設者ば

 かりではありませんので、場合によっては最終的な責任

 追及が困難なこともあり得ます。まずは画面のコピーなど

 客観的証拠を集めておくことが大切です。

 

 7 近所の騒音に困っています

 

 8 恋人にカードを貸したら高額な買い物をして支払をしてくれません。

 

   あなたと恋人の間では当然恋人が支払するという約 

  束があったものと思われますが、カード会社との関係で

  はあくまで名義人の支払義務であり、それが盗難紛失

  等によるものではなく任意に貸した結果によるもので         

  ある以上、あなたが全額支払う義務があります。

   

   そのような事情によるということであれば、仮に自己

  破産することになったとしても、免責が認められないこと

  はないと思われますが、恋人が購入した物品を転売し、

  その分け前を受け取っていたというような場合はこの

  りではありません。

 

 9 親が亡くなったのですが、相続人の中に行方不明者と重度の認知症患者がいます。

 

   遺言がない場合、相続は法定相続分に応じて相続人

  間で分配することになります。実際の手続としては遺産

  分割協議書を作成し全員が署名・捺印しなければなり

  ません。

 

   では行方不明者や認知症患者のように、自分で署名

  捺印できない人やできてもその内容が理解できない人

  についてはどうすればいいのでしょうか。法定相続分ど

  おりだからといって他の相続人がこれを代行すること

  できません。

 

    大変手間と時間さらに費用がかかりますが、行方

  明者については不在者財産管理人を、認知症患者に

  ついては成年後見人をそれぞれ選任し、本人に代わっ

  て相続手続してもらう必要があります。

 

   実際には「えいやっ!」で処理してしまっている事例も

  多いとは思いますが、あとあとのもめ事の種はできる限

  り残さない方が良いと思います。

 

 10 遺言を書きたいのですが。

 

    多少なりとも資産がある方であれば、配偶者や子ら

  のためにも遺言を残すことをお勧めします。遺言で1番

  重要なのは、法定相続分と異なった分割を指定するこ

  とができるということです。具体的には、ある相続人の

  相続分を増減させたり、相続人でない人に遺贈したりと

  いうことです。

 

    遺言には大きく分けて2つあり、自分だけで内容と日

  付を記載して署名捺印する「自筆証書」と公証人役場で

  内容を公証人に説明して作ってもらう「公正証書」です。

 

    「自筆」は手軽に作成できますが、形式や内容が法

  的に有効なものと認められなかったり、せっかく作った

  遺言を見つけてもらえなかったり、あるいは見つけても

    隠されたり捨てられたりという危険もあります。また、家

  庭裁判所での検認という手続も必要です。

 

    「公正」は多少費用はかかりますが、法律の専門家

  が関与して作成されますので、法的に無効となる危険

  はほとんどありませんし、役場でちゃんと 保管してくれ

  ますので、「公正証書遺言してある」とあらかじめ家族ら

  に伝えておけば間違いありません。弁護士を遺言執行

  者にしておくのもいいですね。

 

   なお、遺言したとしても、相続人間の協議によってそ 

  れと異なる分割になることもありますし、配偶者や子、

  直系尊属については相続分を0と指定しても法定相続

  分の2分の1ないし3分の1は遺留分という権利を持っ

  ており、これに対抗することはできません。 (兄弟姉妹にあげたくないときは0にできます)

 

 11   慰謝料ってどれくらいもらえるの?

 

   懲罰的な意味合いも込めて陪審員が決めるアメリカと

  違って、日本の裁判所の認める慰謝料は概して低めで

  す。しかも刑罰のように法律でいくらと決まってるわけで

  もなく、いわゆる相場で判断するしかありません。

 

   離婚の場合、10年以上暮らしてきてお子さんもいて

  一方的な浮気なら300万円くらいでしょうか。                             

   

   交通事故などでお亡くなりになった場合は3000万円

  くらいです。(逸失利益などは別途です)

      

   傷害事件の示談などでは俗に一発10万ともいいます

  が、30万円程度は見ていただいた方が良いかと思い

  ますが、相手方のある交渉ですので実際には事案ごと

  に全く異なります。

 

  12 借りている土地や建物の契約期間が満了したら、出ていかなきゃいけな

  いの?

 

   契約は守られるべきです。でもそれは対等な当事者

  間の場合です。不動産を貸す側と借りる側では通常圧

  倒的に借りる側が弱い立場にあります。そこで借地借

  家法(以前は借地法と借家法に分かれていました。)と

  いう特別法があります。もしこれに反する契約を当事者

  双方納得の上で結んだとしても、借主側に不利益な条

  項は無効となってしまいます。

 

   難しい理屈はさておき、地代賃料の不払いがない限

  りそのまま同じ条件で住み続けられるのが原則と覚え

  ておきましょう。もちろん納得のいく立ち退き料をもらっ

  て出ていくのはご自由です。

 

   ただ、貸主が他に住むところがなく自分が使うことに

  なったという場合は例外です。引っ越し代程度で応じる

  しかないかもしれません。

 

  13  敷金って全額返ってくるものじゃないんですか?

 

   もし未払い家賃があればそれが引かれるのは当然です。でも原状回復

   費用としてそこからさらに一定額を控除されるのが普通です。ではどこま

   できれいにして返せばいいのでしょうか。

 

   基本的に普通に使っていて古くなる部分ついては当然のことであり貸主  

   の負担です。入居時に壁紙や畳が新品であったとしても同様です。しか

   し、借主の使い方が悪くて生じた傷やカビなどは借主が負担しなければ

   なりません。

 

   また最近では契約時に一定の原状回復の内容や金額を定めておくこと

   も多くなっています。それが常識的な範囲内のものであり、十分な説明を

   受けた上での契約であれば応じるしかありません。

 

   いずれにせよ、原状回復の範囲は判断が難しいところがありますので、

   おかしいと思ったら一度弁護士に相談することをお勧めします。

 

 14 貸したお金を返せという裁判で勝ちましたが、相手は無一文です。

 

   裁判所は勝訴判決を出してくれても、相手方から強制

  的にそれを回収してくれる訳ではありません。強制執行

  という制度はありますが、それはあくまで勝った債権者

  の側が債務者にはこのような財産があるということで

  し立てるものであり、相手方の資力の有無や内容につ

  いては裁判所は面倒をみてくれず、債権者が独自に調

  査しなければいけません。財産開示制度というものもあ

  りますがきわめて不十分なものです。

 

   そのため弁護士は事件を受任する際、勝てる可能性

  があるかどうかに加え、相手方に資力があるかどうかを

  確認します。せっかく苦労して勝っても、無いところから

  は取れないからです。勤め人なら給与差し押さえという

  方法がありますが、退職されてしまえばそれまでです

  し、不動産を持っていても配偶者名義であったり、金融

  機関の担保になっていたりして執行できないことも多く

  あります。また年金や生活保護費は差し押さえることが

  できません。

 

   もし財産を持ってるけど隠したり名義を変えたりする

  可能性がある場合には、裁判の前に仮差押えや仮処

  分という保全手続をすることになります。

   

 15 裁判をしたい相手方が行方不明です。

 

   裁判を始めるためには訴状という書類が相手方に届

  くことが必要です。住所も居場所も勤務先も分からず、

  郵便の届け先も分からないときはどうすればいいでしょ

  うか。

 

   このような場合に用意されているのが公示送達という

  制度です。これは裁判所の掲示板に一定期間掲示する

  ことによって、相手方に届いたものとみなしてしまうとい

  う制度です。

 

   但し、現実には全く相手方に知られることがないので

  悪用される危険もあり、各種調査報告を裁判所に上げ

  て、ようやく認めてくれるのが実情です。

 

   また、判決内容によっては相手方が行方不明でも問

  題ないものとそうでないものがありますから、まずはそ

  もそも何を請求するのかの検討が必要です。

 

 16 破産されたら婚姻費用や養育費ももらえなくなるの?

 

   自己破産して免責が決定するとそれまでの債務は帳

  消しになります。

 

   但し、これには例外があり、婚姻費用や養育費、租

  税、故意の不法行為、重過失による人の身体生命への

  不法行為等については対象外とされています。

 

   免責されまともな生活ができるようになった相手方に

  対して、破産前の分も含めて請求することができます。